風邪ひいた。熱が下がらないから動けない。
連日寒い夜中に冷たい床に伏せて冷たい銃握ってりゃ当然かもな。
人殺しの報いがこんなもんなら安すぎて笑える。
最近そっちの仕事ばかりで忙しかった。
マコトに会いたかった。
なのにメールして返ってきた返事がこれだ。仕事第一主義者め。
何でこんなヤツが女にもてんだ?顔に騙されてんぞ、世の女ども。
マコトに言わせれば、「俺はもてようと思ってもててるわけじゃ無い」らしいが。
もてない男どもが聞いたらただじゃ済まされないような台詞だ。
はー、別にンな事どうでも良いか。頭痛ぇ。寒い。・・・寝直そ。



「・・・ィ、なぁ、K!」
身体を揺すられてぼんやりと目を開ける。あー、マコトの声だ・・・。
「おー・・・」
「大丈夫か?ほんとに身体熱いな。ちゃんと着替えてる?」
「いや」
「えっ、もしかしてアンタただ寝てただけじゃないだろうな」
「だけ」
マコトが来てくれるから良いやって思ってました、とは言ったら怒られるだろうから言わない。
「風邪薬は?どうせ無いと思って買ってきたけど」
「飲まない」
声が擦れてうまく出せない。
「治んないだろそれじゃ」
「いい」
あんな不味いもん飲めるか。
断固拒否を決め込む俺にマコトは呆れ顔だ。
それでも溜め息を一つ吐くとよいしょ、と立ち上がった。
「ったくしょうがないな〜。今着てるの脱いで。あったかいタオルと着替え持って来る」
マコトは俺の返事も聞かずにてきぱきと用意に取り掛かる。
弟があんなんだから相変わらず超面倒見がいい。
温かいタオルで身体を拭いたら何だかすっきりして、漸く目が覚めてきた。
おかげで放っておかれた事実に段々ムカついてきて、キッチンで飯作ってるマコトに今更のように愚痴を言う。
文句言うなの一言でばっさり切り捨てられたけど。
それでも空っぽの胃に温かいお粥は旨かった。
お粥を食ってる俺を見て、マコトが笑ってたからかもしれない。
何か人の優しさに触れんのが久しぶりな気がする。
柄じゃねぇけど、素直に嬉しかった。
あー、ちゃんと触りたい。マコトに。
しばらくごろごろしながら考えたけど、やっぱり触りたい。
「なぁ、キスしてぇ」
今日おかしいなぁ俺。何断り入れてんだ。
マコトは一瞬びっくりした顔をした後聞き返してきた。
何度も言わせんなよ・・・今更照れる。
しかも理由まで聞いてきやがる。あーこれマジで結構照れる。
しかも挙げ句の果て駄目とか言われた。無理矢理しようにも後が多少怖いのも事実。
「けちぃな」
「そう思うなら早く治れよな」
俺はよほど憮然とした顔でもしてたのだろうか。
マコトは苦笑して、俺の前髪を梳いてきた。
それが心地よくて何も言わないでいたけど、やっぱ好きな相手にこういう事をされると。
何ていうかその、あれだ。



そしてその結果がこれだ。つまり顔面クッション。
半分冗談だったのにすごい仕打ちだと思う。
こうなったら意地でも風邪を治して仕返しだ。
俺は復讐を誓い、不味い風邪薬を飲むために無理矢理起き上がった。






あとがき
つまり半分は本気だったKK。